コミュニケーションが苦手な人へ
言葉だけでは無い世界
コミュニケーションと聞いて、真っ先に思い浮かべるのは会話による交流ではないかと思います。もちろんそれは間違いではありませんが、言葉のやり取りだけがコミュニケーションというわけではありません。実際、コミュニケーションの70%以上が言葉以外の要素で占められているとも言われています。
あなたが、セールスマンと話している場面を思い浮かべてください。5分間話したとして話された言葉をすべて思い出すことが出来るでしょうか? しかし、言葉自体は思い浮かべることができなくても、相手がぎらぎらした視線をこっちに向けていたことや大きな声で畳み掛けるように話していたことなどは容易に思い出すことが出来ます。
もちろん文章的内容も重要になってくる場面もありますが、相手に与える印象度という点では、言語以外の要素は非常に大きなウエイトを占めるのです。
ちなみに、言葉によるコミュニケーション要素を「言語的コミュニケーション」、言葉以外によるコミュニケーション要素を「非言語的コミュニケーション」と呼びますが、「非言語的コミュニケーション」の内容をもう少し詳しく書き出すと以下の様な要素があります。
[非言語的コミュニケーション]
@ 視線
ためしに視線を合わせずに、人に話しかけてみてください。どうですか? なんだか力が入らない気がしませんか。視線は、人に自分の意思の内容を表すのにきわめて重要な役割を果たします。
A 身振り手振り
何も言わなくても、去り行く相手に手を振れば「さようなら」の意味になります。会話の最中でもうなずいたりすることで、自分はその意見に共感しているという意思を示すことになるでしょう。
B 姿勢
姿勢が違うと同じ事を話しても、かなり違った印象になります。ちょっと実験してみましょう。まずは身をかがめ下とむいて「もうだめだ」とつぶやいてみてください。次に両腕を開いて上を向いて同じ事をつぶやいてみてください。だいぶ様子が違うでしょう。
また、体の話し相手の方へ乗り出し具合によって、話への興味の度合いが確認できます。
C 体の向き
体の向きは視線や姿勢と同じように、会話に対する自分の興味の強さを表すことができます。たとえきちんと返事をしていても、体が話し相手の方を向いていないのは、あまりその話に真剣ではないように感じられるでしょう。
D 表情
表情だけでも様々な感情を相手に伝えられることは、容易にわかると思います。会話に喜怒哀楽、様々な表情を加えることで、話に多様な彩を添えることが出来ます。
E 声の出し方
声の大小、高低、話の速度を駆使することで、遊園地のような陽気さから陰々滅々とした陰気なようすまで、様々な感情を表現できます。
相手を認めるという事
円滑なコミュニケーションを形成するには、相手との良好な関係を築き上げる必要があります。良好な関係を築く基本は、相手の存在や、相手の意思、相手の話す事を認めるという事です。もちろん、この認めるという事は、なんでもかんでも相手の言いなりになるという事ではありません。
ここで言う「認める」という事は、「私は貴方の言うことをきちんと聞いていますよ。貴方の言うことは私が耳を傾けるだけの価値があると思っていますよ。貴方がそういう意見を持っているという事をちゃんと理解していますよ」という事を「言語的コミュニケーション」や「非言語的コミュニケーション」を使って相手に伝えるということです。
特に、前の項目で話したように、「非言語的コミュニケーション」できちんと示すことは重要です。きちんと相手に視線を合わせ、相手の方を向き、姿勢や身振り手振りで相手の話にリアクションを示し、表情や声で相槌を打つ事で、相手は「この人はちゃんと自分の話を聞いてくれている。きちんと理解して返答してくれている」と感じることが出来ます。
全ての人間は、他者に認められたいという根源的な欲求を持っています。それを満たすという行為は他人に影響を与える為の強力なツールになるのです。もし貴方が、相手ともっと親しくなりたいと思うなら、更に一歩進んで「ほめる」というツールを使うのも良いでしょう。見境なく乱発するのは禁物ですが、適切に「言語的コミュニケーション」や「非言語的コミュニケーション」を活用して相手を「ほめる」のは非常に効果的です。
自分の事を評価してくれる人間を否定することは自分自身を否定するような気持ちになりますから、程度の差はあれ、大抵の人は貴方のことを快く思ってくれるでしょう。
相手の心を読む方法
「○○○さんは一度喋りだすと止まらないんだ。こっちが迷惑顔しててもお構いなしでね」等というシチュエーションは誰でも遭遇したことはあるのではないでしょうか。このように話している相手の都合を考えず独り善がりな話を続けてしまう人は、結構多い物です。
しかし、案外自分自身でも同じようなことをやってしまっているかも知れません。そうならないためには、相手が今している話をどのように感じているのかが判断できる必要があります。その判断を行う基準となるのが「ゴーサイン」「ノーゴーサイン」というものです。
簡単に説明しますと「ゴーサイン」は相手からの話を続けても良いという合図で「ノーゴーサイン」は話を切り上げた方が良い、あるいは別の話題を話したほうが良いという合図のことです。具体的には以下の様な物があります。
[ゴーサイン]
視線が合っている
あなたのほうに体を向けている
相槌を打つ
笑顔
質問をはさんでくる
身を乗り出して聞いている
[ノーゴーサイン]
視線があなた以外のところをさまよっていることが多い
そっぽを向いている
相槌がない、あるいは力ない相槌
返答や質問がかえってこない
不機嫌そうな顔
しきりに時間を気にしている
あくびをしている
忙しそうにしている
作業に集中している
怒っている
相手と円滑な関係を続けたいのなら上記のようなサインに注意してコミュニケーションを進めましょう。
交流を求める人へ
最近の社会人の中には、「友達は欲しいんだけど、どうやって作ったらいいかわからない」という人や「仕事上の付き合いはあるけど、プライベートで一緒に行動するような人はいない」という人が増えているようです。
友達や恋人などの交流相手を作るには、まずそのような相手に話し掛ける状況を作り、候補を選び出し、実際に話し掛けなければなりません。その3つの要素を具体的に下に挙げていきます。
[話し掛けやすい場所]
他人に話しかけやすい場所とはどんな場所でしょうか? 最初に思いつくのは職場や学校でしょう。これらはいつも良く行く場所であり、かつ、いつも同じ人と顔をあわせる上、更にあなたと同じ事をする人が揃っているため、もっとも話がしやすい場所といえます。このような場所は、他にはいつも良くいくショップなどが該当します。そのほかに、話しかけやすい場所としては順番を待つ行列の中や長距離バスの中などしばらくの時間、同じ人と一緒にいる場所や人々がたくさん集まる公園などがあげられます。
[相手候補の選び方]
話をするには相手が不可欠です。話し相手として適切か否かは、相手の『ゴーサイン』『ノーゴーサイン』を観察しながら判断します。
[話し掛ける話題:オープニングライン]
人に話しかけるには話題は不可欠です。しかし、話が苦手という人は話題を見つけるのも苦手という人が多いでしょう。そんな人は次に上げる『オープニングライン』を利用することが出来ます。
『オープニングライン』
@ 自分の周りにあるものについて話す
A 相手と一緒にしていることについて話す
B 相手の何かをほめる
C 相手が今行っていることについて質問する
D 情報を求める
E あいさつと自己紹介を行う
これらの中の話題を使うのが話しかけの言葉としては一般的と言えます。
会話を続けるポイント
アンケートを取ると90%以上の人が「自分は話が苦手」と応えるそうです。特に「話をうまく盛り上げられない」「話が続かない」という経験は誰でも持っているのではないかと思います。そんな人たちの為に、ここでは話を続けるポイントを上げていきましょう。
[積極的に聞く態度]
一生懸命話をしていても、他方がそれに興味を示さなければ、話を続けようとういう気持ちにはなりません。話を盛り上げるためには、うまく話すだけではなく、うまく聞く必要があるのです。うまく相手の話を聞くには次のようなポイントがあります。
@ 関心を示す
A 簡単なコメント
B 促す言葉・態度
C 説明を求める
D 質問する
[開かれた質問と閉じた質問]
質問をすることで相手や相手の話に興味があることを示すことが出来ますが、更に、質問の仕方によって話をうまく盛り上げたり誘導したりすることが出来ます。その代表的なものが開かれた質問と閉じた質問です。
開かれた質問とは相手の返答の幅を広げる質問で、「君はどう思う?」「何を買ったの?」などが上げられます。この質問は相手の返答内容の自由度が高く、相手は好きなことを話せる半面、相手が話を得意ではないときに会話が途切れやすくなる危険もあります。
逆に閉じた質問とは「はい」や「いいえ」など、相手の返答の幅が狭い質問形式で、相手の返事の内容をあるていど特定できるため、これを使うことにより会話の方向性を操縦しやすくなります。しかし、相手の発言の余地が限られるということは、会話を弾みにくくすることにもつながります。
[話題を見つける]
話をしているうえで自分が知らない話題があがってくると、とまどってしまいます。しかし、黙っていることもできません。話の途中で話題をみつける、もっとも簡単な方法は相手の話題やそれに関連する事柄の中から自分の知っている話題を見つけることです。
そのためにも、相手の話を良く聞く技術が重要になってきます。相手が話していることが何か解らなければ、相手の話の中から自分の話題を探すことなど出来ません。前述の「積極的に聞く態度」を併用しながら、話題を探して見てください。
[自己開示]
どこまで自分について話すかは、結構考えさせられる事柄です。特定の事柄にしか興味を持たず、そのことにだけ特に詳しく饒舌になるような人間を「オタク」等と呼んでいますが、誰でも自分の事に関しては「オタク」と呼べるほど詳しいものです。
だから、つい詳しく話したくなりますが、必ずしも相手がそれを知りたいとは限りません。会ったばかりの人に「実は自分は捨て子だったんだ」なんて自分の出生の秘密を語り始めたら変な人だと思われてしまいます。
一般に自己開示には3つのレベルがあると考えられます。軽いレベル、中等度のレベル、高いレベルです。
軽いレベルの自己開示とは、会ったばかりの人も合わせて誰にでも話せる内容の情報を言います。例えば名前とか出身地とか時事ニュース等の単なる事実です。あまり相手に負担をかけたく無い場合や最初にあったとき等はこのレベルの話題で会話を済ませておいたほうが良いでしょう。
中等度レベルの自己開示とは、ある程度プライベートな情報が含まれます。例えば自分の過去の出来事や自分自身の意見などです。このレベルの自己開示を行うのは、ある程度相手の反応を予測できるぐらいに相手と親しくなったときにしましょう。
高いレベルの自己開示とは、個人的な意味合いが非常に強く、誰かに話すには危険が伴う事実やあまり一般的ではなく相手が非常に興味を持ったときにしか話してはいけない濃い内容の事柄です。このレベルの事柄は本当に信頼できる相手のみに行うようにしましょう。
適切な自己開示のレベルを間違えると、相手を不快にするのはもちろん、自分自身をも危険にさらすことにもなりかねませんが、逆に適切な自己開示を行える人は、相手とすばやく親しくなることが可能です。